新宿

 

うるさいうるさいうるさい

 

「お姉さん1000円でライン交換しない?割りに合うと思わない?どう?」

たかが1枚の紙切れを目の前で振られながら新宿駅東口広場から靖国通りへ向かう道を追いかけられる

 

つい1ヶ月前まではただうるさいと思うだけで、言葉も発さずにただ黙って無視をしていた

これも新宿の文化だと思っていた

 

新宿駅から歌舞伎町に向かう方面には

数えていた方がバカらしくなるほどスカウトがいる

 

「お姉さん、保証6出せるよ!どう?」

「お姉さん、ラウンジ?キャバ?ライン教えてよ」

「お姉さん、川崎でしょ!店当てるよ!」  

こんな暴言が一方的に、望んでもいないのに降りかかる

 

こんなところにいる人間は大体夜職だしホストにも行くだろう、こんなの普通だ、なんて思っていた、アホか

 

1ヶ月前、ホストクラブに行かなくなった

1年と少し、毎日のように新宿に居たが、1ヶ月足を踏みいれなかった

 

ただ久しぶりに、新宿にネイルを変えに行った 

切れていたカラコンを買おうと靖国通りドンキホーテに向かっていただけだった

 

「お姉さん、これからホスト?」

今何時だと思ってんだよ、17時半に開ける店がどこにあんだよ、てきとーに声掛けんな死ね

 

一人が消えたと思うと、また一人から罵声に聞こえる声を浴びせる、終わりが見えない

たかが千円をひらひらと目の前に振られると怒りが溢れる、誰がそんなんで釣られるんだ

たかが千円でも、金を目の前で振られることは非常に侮辱的な行為に感じる、千円だからかもしれない

 

私は千円に困っているように見える女なのだ

少なくとも、この街では

 

あまりにも腹が立ち、1か月でいらなかった免疫がなくなった私はプラントに入ることにした

 

ハッピーアワーだ、ビールでも飲もう

そんなことを思っていたが、地下の喫煙室は地獄だ

 

ここを利用する時はいつも22時をすぎていたから、夕方の様子など知らなかった

 

風俗の仕事の相談をするスカウトと女の子で溢れかえり、バックの話やら根拠のない稼げるよ!というスカウトの話しが繰り広げられている

 

かまし

 

あんなにも大好きだった町が、一瞬にして不快な町へと変わっていった

 

それでもきっと、夢中になっていたあの時期だけは、あの時の私の中できっと輝いていた

起きれない

 

11時半 起床した

 

昨日は薬を抜こうとしたせいで体調が悪かった  体調が悪いと大体むしゃくしゃする

 

結局昨日は薬も飲んだしお酒も飲んで寝た

 

アラームもかけずに寝たらこの時間だ

 

zoomで既に始まっている授業をつける

カメラと音声をミュートして歯を磨き方を洗う

 

昨日買ってきてもらったパンを食べる

 

ここまでは特に平凡な1日だ

 

そしてまたヘブンを開く

あーーーーーーーーーーーーーーー 

行きたくない

 

本当に行きたくない

 

ここ最近、自分の様子が本当におかしい

 

こんなにも仕事を全身で拒否することはなかった

 

外は大雨なのに、わざわざソープランドに来て、セックスをしに来ると考えると面白い

 

準備をしている時間と電車で向かう時間が

一番体調が悪くなる

 

いっそのこと私は店の近くに住みたい

 

苦しい時間を減らしたい

 

疲れた  まだ起きたばかりなのに

 

触られたくない

画面と現実

 

朝起きてヘブンを確認する

 

仕事を辞めたいなんて思うのにお金は欲しいからと、いそいそとキテネを押す

 

本指から

「キテネありがとう❤️」とかラインがくる

 

私はお前のヘブンの名前知らねーし、てかそもそも来てほしいのはラインじゃなくて予約か来店

 

来てほしくないものが来る最悪な機能

 

自分のキャラを確立して、自分とは別のキャラクターを消費してもらおうと考える  日記を書く

 

でも、どんなに別のキャラクターを演じても、身体自体は私のものだ、感情労働に肉体労働を兼ねるこの仕事はつくづく大変だと思う  別に汚い仕事だと言われても構わないからもっとバックをあげてほしい

 

汚い仕事だとは自覚してるし、この仕事に誇りを持つことも嫌悪することも自由だし

 

だからせめてその業界にいる人から金銭的に搾取される割合の少ない環境に身を置きたい

 

自分で撮り溜めた写真を加工して

新しいヘブンの表示に対応するように

正方形くんで画像を正方形にする

 

日記を書く

 

客に返信を返す

 

店の回り具合を休みの日にも確認して、1枠出勤を増やそうと決めて連絡を店に入れる

 

ここまではあまり苦にならない

自分でも仕事に行けると思ってるからだ

 

そしていざ仕事に向かおうとすると

本当に苦しくなる

 

もちろん自分の精神的な病気もあるだろうが

身体が仕事自体を拒否する

 

ある限りの薬を飲み込んで

電車の壁を蹴りそうになりながら仕事に行く

 

何のプライドでこんなことをしてるのか

 

13歳で下着を売り始めた私はきっと

お金を稼げなくなることが怖いのである

 

お金の話ばかりする母親、無駄金がかかると唱えられた幼少期、お金を稼げた時の安心感

 

「自分が稼いだお金」が心の余裕だったのに

今はその行為に苦しめられている

けれども、お金がある時の安心感や緊急時への不安により、お金を稼ぐことに執着している

そして、それにより精神的に疲弊している

 

21歳でこの有様だ

 

私は今後どのように生きるのだろうか

 

若くて綺麗なうちにお金を稼げるだけ稼いでも

その先にどんな感情が待っているのだろうか

 

私は歳をとって単価も下がり、客付きも減った時、

人間としての自分という存在の価値を正しく判断することが出来るのだろうか

 

私には何もわからない

ただ、今、この状況で耐え、限界が来たら逃げるまでだ

 

 

 

 

洗脳

お金に特に追われても居ないのに

何故か今日も動悸に苦しみながら行きたくないと癇癪を起こしながら仕事に向かっている

NSってなんだろうか

ホス狂いやめても稼ぎ落としたくないプライド

ださすぎる

 

あーーー

 

できるできるできるできる大丈夫

行けばなんとかなるよ

君の接客は天性だよ

なんてあるわけねーだろしね

 

どこまで自分を大切に出来ないのか

大切にするってなんなのか

薬をレッドブルで流してどんどん処方も増えて

わたしは何と引き換えに何を消費されて

お金を稼いでいるのだろうか

 

宮台真司は援交少女は後悔しないと言った

んなわけねーだろ

 

援交を始めた時はまだ入り口の入り口

そこから人生長く

消費されることを自ら選択することになる

 

電車止まらないかなー